「東山三十六峰」の最南端に位置する霊峰、稲荷山。全体を神域とする伏見稲荷大社は、創祀和銅4年(711年)の全国の3万以上の稲荷神社の総本宮です。稲荷山を神域としたこの神社は、古くは食物や蚕桑あるいは諸願成就の神として信仰されました。中世から近代にかけて商業および屋敷神へとご神徳が拡大。これは、今日の稲荷山の風景を形成しました。
稲荷山の山道には、信者から奉納された約1万基の鳥居があります。特に本殿背後から奥社にかけて鳥居が連なる千本鳥居は有名で、伏見稲荷大社と聞くとそれを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。願い事が「通る」あるいは「通った」お礼の意味から、鳥居を奉納する習慣が江戸時代以降に広がった末の姿が今日の稲荷山の光景を作ったのです。
国の重要文化財に指定されている本殿と御茶屋(非公開)をはじめとした26万坪にも及ぶ境内の神蹟群や建造物。どれも一見の価値があるにも関わらず、大多数の参拝者は参拝とお守りなどの購入と境内を散策するだけにとどまっていますが、実は伏見稲荷大社にはもう一つの楽しみがあるのです。
それは、登山。千本鳥居より上へ向かうとちょっとした稲荷山領域のハイキングになります。麓から頂上までは、往復2、3時間ほど。頂上に近づけば近づくほど人の姿が少なくなっていきますが、その途中の熊鷹社のそばには池(八島ヶ池と新池)があったり、さらに奥へ行くと清滝があったりと見どころ満載。カメラのレンズに収めたくなるような風景にいくつも遭遇します。
登頂すると、京の都と地理が良く分かる眺めが広がっています。また、茶店もあるので軽食を取って下山に備えて。暗くなることに山を下りることは一般的には避けた方が良いのですが、ここはうっすら暗くなると提灯が灯され、柔らかい光が幻想的で神静な世界を作り出します。
稲荷大神の使い(眷族)とされるキツネの銅像も探してみるのも面白いかもしれません。中には、米蔵の鍵を口に咥えたキツネもいます。
アクセス: JR奈良線稲荷駅から徒歩すぐ。境内自由、年中無休。