壮大なグランド ハーバーを見渡せるリネッラ砦。マルタ島の軍事史を雄弁に物語る展示品から過ぎ去りし時代を知ることができます。
リネッラ砲台とも呼ばれるリネッラ砦は 1878 ~ 1886 年のイギリス統治期に建設されました。当時イタリアが戦艦を建造中で、イギリスはマルタ島の防衛をさらに重視するようになりました。なぜならこの小さな島国が地中海を横断するインド航路の重要地点となっていたためです。敷地はとてもコンパクトですが、砲台の周りに空堀が巡らせてあり、入口へ通じる道からは見えない角度に門が設置されているといった考え抜かれた設計です。この砲台がなぜ珍しいかというと、機械化要塞のはしりで、それまでの要塞ほど多くの兵士を必要としなくなったからです。
世界各地からリネッラ砦を訪れる人々のお目当ては、90 トンのアームストロング砲という巨大な先込め式大砲です。これは同種の大砲のなかで史上最大級であり、世界でも現存しているものは他に 1 基しかありません。この大砲が設置された当時は、新たな産業化時代の象徴とみなされ、比類のない威力を持っていました。あまりに巨大なため、弾込めから発射には石炭をくべる蒸気機関が必要でした。
午後には古風な軍服を着た人々による再現劇が上演され、マスケット銃の射撃も行われます。時には大砲を発射することも。リネッラ砦はマルタ歴史遺産財団による大規模な復元工事が完了し、映画のロケ地としても何度も使用されています。来場者はガイド付きツアーに参加したり、映画上映や再現劇を鑑賞したりできます。この再現劇は 1 日に何回か上演され、軍事訓練や手旗信号、剣術なども披露されます。
リネッラ砦への入場は有料です。マルタを旅行するなら、マルチサイト ヘリテージ パスを購入すれば国立戦争博物館、リネッラ砦、ラスカリス戦争記念館に入場できるので、より多くの史跡を訪れることができます。この砦はリカソリ要塞と聖ロッコ要塞の間にあり、路線バスまたは車でのアクセスが便利です。