投稿者 : 鈴木 圭、投稿日 2019 年 9月1日

アルプスに囲まれた古都、ボルツァーノでドロミテの情景を満喫する

北イタリアのミラノから電車に乗って、さらに北に3時間ちょっと。オーストリアとの国境近くにはボルツァーノという街があります。ローマやベネチアなど他の有名都市と比べると日本での知名度はまだまだですが、世界自然遺産にも登録されているドロミテ観光の拠点ということもあり、世界中から多くのハイカーが集まる街です。
ハイカーの多くはドロミテ観光を目的として訪れるため、ボルツァーノはあくまで通過点として認識されがちですが、実はイタリアの他地域ではあまり見られない独特の雰囲気がある魅力的な街です。ドロミテに行くなら必ず立ち寄ることになる、この街の見どころやグルメ情報などをまとめてお伝えします。

ドロミテ観光の拠点、ボルツァーノってどんな街?

イタリアにある20の州の中で、最も北側に位置するトレンティーノ=アルト・アディジェ州。ボルツァーノはその第二の都市で、周辺地域を含めても人口10万人ほどの小規模な街です。
先にも書きましたが、この街の魅力はある意味イタリアらしくない、独特の景観にあります。というのも、ボルツァーノがあるのは車で80キロも北上すればオーストリアのチロル地方に入るという場所。景観はイタリアよりオーストリアに近く、街歩きをしているとまるで別の国に来たような気分を味わえます。

ボルツァーノはイタリアよりオーストリアやドイツに近い雰囲気
街の雰囲気はイタリアよりオーストリアやドイツに近い

ボルツァーノは一時期オーストリアの領土だったこともあり、住民の25%は未だにドイツ語話者であるという統計もあります。そのため、学校ではイタリア語で学び、家庭ではドイツ語で会話する子供も珍しくないのだとか。
そもそも街の名前からして「Bolzano Bozen(ボルツァーノ ボーツェン)」と、イタリア語とドイツ語が併記されているのだから、どれだけドイツ語が浸透しているかうかがえるというもの。街の標識やレストランのメニューも両方の言語で書かれているので、うっかりすると自分がイタリアにいることを忘れてしまいそうになります。

街中の広告もイタリア語とドイツ語の併記
街中の広告もイタリア語とドイツ語の併記

こんな感じで、ローマやナポリ、フィレンツェなどとはまた違った雰囲気が味わえるのがボルツァーノの魅力。ドロミテ観光をする人はもちろん、イタリアに何度も来ているという人にもぜひ訪れてほしい街です。もしかしたら、また新しいイタリアの一面が垣間見えるかもしれません。

コンパクトなのに見どころにあふれた街

ボルツァーノの街はコンパクトで、見どころのほとんどは旧市街地にまとまっています。中でも必ず訪れておきたいスポットをご紹介しましょう。

街の雰囲気を味わえる「ポルティチ通り」と「エルベ広場」

ボルツァーノ到着したら、まずは旧市街地の中心に広がる「ポルティチ通り」と「エルベ広場」から街歩きを始めてみましょう。「ポルティチ」とは雨天でも歩けるよう屋根のついた柱廊のことで、15〜18世紀ごろに建てられた歴史あるもの。アーチの上部にはエルカーと呼ばれる出窓や漆喰の装飾、パステルカラーの色彩などが見られ、イタリアの他地域にはない中欧らしい雰囲気を感じることができます。

ポルティチ通り
ポルティチ通りはボルツァーノの目抜き通りでもある

また、ポルティチ通りの西側に位置するエルベ広場では市場が開かれており、野菜や果物、パンなどの食料品を扱う屋台が軒を並べています。日持ちする乾物やスパイスなどを扱う店もあるので、お土産を探すにもぴったりの場所です。

エルベ広場では市場が開かれている
市場は日曜日以外、毎日開催されている

エルベ広場の市場(Mercato della Piazza delle Erbe)
住所:Piazza delle Erbe, 39100 Bolzano
営業時間:月〜金曜7:00〜19:00、土曜7:00〜13:00(日曜定休)

ボルツァーノの象徴的な存在「ドゥオモ」

鉄道駅近くのヴァルター広場に面する大聖堂(ドゥオモ)もボルツァーノの見どころの一つ。14〜15世紀ごろに建設されたゴシック様式の建築で、ウィーンのシュテファン大聖堂にも似た急勾配の屋根は、この地がオーストリア文化の影響を強く受けていることを感じさせてくれます。

ドゥオモ
屋根の模様と鐘楼が特徴的な大聖堂

第二次世界大戦で受けた爆撃の影響でステンドグラスやフレスコ画の一部が失われており、大聖堂にしてはシンプルな造りなのがちょっと物足りなく感じるかもしれません。ただ、鮮やかな文様の屋根瓦と62メートルの鐘楼は圧巻の一言で、これを見るだけでもボルツァーノを訪れる価値があります。

ドゥオモ(Duomo Maria Assunta)
住所:Piazza della Parrocchia 27, 39100 Bolzano
電話番号:(+39)335-5732213
営業時間:月〜土曜10:00〜12:00、14:00〜17:00(日曜定休)

5000年前のアイスマンに出会える「考古学博物館」

1991年、イタリアの山中で一体のミイラが発見されました。発見当初は遭難した登山者と考えられていましたが、調査の結果このミイラは5000年も前の人物であることが判明。当時は歴史的発見として、日本のメディアでも大きく取り上げられました。
このミイラを保管しているのがボルツァーノ県立考古学博物館です。アイスマン(エッツィとも)と名付けられたこの人物が生きていた当時の生活の様子や、死に至った経緯などを事細かに分析し、展示しています。

県立考古学博物館
考古学博物館ではミイラの実物も見ることができる

ボルツァーノ県立考古学博物館(Museo Archeologico dell’Alto Adige)
住所:Via Museo 43, 39100 Bolzano
電話番号:(+39)0471-320100
営業時間:10:00〜18:00(定休なし)

岩壁の上にそびえる要塞「ロンコロ城」

時間に余裕があれば、ロンコロ城もぜひ訪れてほしいスポットの一つです。ボルツァーノ郊外にあるサレンティーナ渓谷の岩壁の上にそびえる要塞で、場内には14~15世紀頃の貴族の生活や狩りの様子を描いたフレスコ画が展示されています。

ロンコロ城
岩壁の上にそびえるロンロコ城

城自体はそれほど大きいものではありませんが、361メートルの岩壁の上から見る景色は素晴らしく、ボルツァーノの街を一望することができます。また中庭には簡易的ながらレストランもあり、中世の城の中で食事をするのも素敵な体験になるでしょう。

かなりの急坂を登る
かなりの急坂を登るので、歩きやすい靴で訪れたい

ロンコロ城(Castel Roncolo)
住所:Sill 15 I, 39100 Bolzano
電話番号:(+39)0471-329808
営業時間:火〜日曜10:00〜18:00(月曜定休)
アクセス:ヴァルター広場から直通のシャトルバスで約10分(30分おき出発)

ボルツァーノ観光にはモバイルカードが便利!

ボルツァーノ市内を観光するなら、モバイルカードの購入をおすすめします。モバイルと言っても電話ではなく、バスやケーブルカーなど市内の交通機関と主要な観光施設の入場チケットがセットになった、市内を「自由に動き回れる」カードです。

ボルツァーノ観光にはモバイルカードが便利!
観光施設と交通機関のチケットがセットになったムゼオモバイルカード

カードには交通機関だけのもの、観光施設を含むものなどいくつかの種類があり、有効期間によって金額が異なります。滞在期間に合わせて選ぶようにするといいでしょう。
カードは基本的に観光施設の入口で購入できるようですが、一部取り扱っていない場所もあります。そのため、確実に入手するなら鉄道駅近くのツーリストインフォメーションを訪れることをおすすめします。

ツーリストインフォメーションは駅南西のアルト・アディジェ通りにある
ツーリストインフォメーションは駅南西のアルト・アディジェ通りにある

モバイルカード(交通機関だけのもの)
・1日有効券:大人15ユーロ、小人7.50ユーロ(14歳以下、以下同じです)
・3日有効券:大人23ユーロ、小人11.50ユーロ
・7日有効券:大人28ユーロ、小人14ユーロ

ムゼオモバイルカード(交通機関と観光施設のセット)
・3日有効券:大人30ユーロ、小人15ユーロ
・7日有効券:大人34ユーロ、小人17ユーロ

ボルツァーノ名物料理はイタリアらしくない?

イタリアらしくない独特の雰囲気が流れるボルツァーノ。と聞くと、どんな料理が食べられるのか気になる人も多いのではないでしょうか。ボルツァーノでぜひ試してほしい郷土料理をいくつか紹介しましょう。

肉料理が好きなら挑戦したい「スティンコ・ディ・マイアーレ」

スティンコ・ディ・マイアーレ
まるでマンガ肉、といえば雰囲気が分かりやすいかも

すべての肉好きの方におすすめしたいのがこのスティンコ・ディ・マイアーレ。大きくカットした豚のスネ肉をニンジンやセロリなどの野菜と一緒に煮込み、さらにオーブンでじっくりと焼き上げるという手間のかかった一品です。

ひと塊の肉がどんと皿に乗ったその姿はいかにもボリューム満点で、見ているだけでテンションを上げてくれます。飽きてきたら付け合わせのザワークラウトで口をさっぱりさせ、また黙々と肉に取り掛かるのが正しい食べ方。味付けは見た目ほど濃くなくさっぱりと食べられますが、かなりのボリュームがあるので数人でシェアするのもいいかもしれません。

素朴で懐かしい味わいの「カネデルリ」

カネデルリ
日本のすいとんを思い出させる素朴な味

茹でたじゃがいもやパン、小麦粉などを団子状に丸めたカネデルリもこの地方の郷土料理の一つ。いかにも山岳地帯の料理らしい素朴な味わいで、どこか懐かしさを感じる料理です。ドイツやオーストリアなどでもクネーデルと呼ばれる同様の料理があるので、そちらでご存知の方も多いかもしれません。

茹でたものをそのまま食べるほか、スープの具にしたり料理の付け合せとして提供されたりすることもあります。中身の具はレストランによっても変わりますが、ボルツァーノではスペック(アルト・アディジェ発祥のスモーク生ハム)を混ぜたものが一般的です。

お酒が強くなくてもごくごく飲める「ラードラー」

ラードラー
ビール特有の苦味もなく飲みやすい

ドイツやオーストリア文化の影響が強いボルツァーノにはパブが多く、そこで食事をする人も多いかもしれません。そんな時に試してほしいのがこのラードラーです。

ラードラーとはビールとレモネードを同量ずつ混ぜたカクテルのこと。ビール単体よりも喉通りがよくアルコール度数も低いので、お酒が苦手な人でもごくごく飲むことができます。街歩きやトレッキングを楽しんだ後はまずこれを1杯飲んでみてください。疲れた身体にすうっと染み渡りますよ。

ドルチェの定番はやっぱり「アップル・ストゥルーデル」

アップル・ストゥルーデル
甘く煮たリンゴがたっぷりと詰まった山国らしいドルチェ

アルト・アディジェ地方の定番ドルチェといえばやっぱりアップル・ストゥルーデルです。アップルパイに粉砂糖をたっぷりとまぶしたお菓子で、ドイツ語で「アプフェルシュトゥルーデル」と呼ばれることもあります。

アップルパイと聞くと珍しさが薄れるかもしれませんが、イタリアのアップル・ストゥルーデルは生地が柔らかく中身がたっぷり詰まっています。レストランで食べるのもいいですが、街歩きの途中でパスティッチェリア(お菓子屋さん)で買ったものを食べ歩くのもおすすめ。もちろん食べやすい形状ではありませんが、これをスマートに食べ歩きできればボルツァーノはマスターしたも同然……かもしれません。

コンパクトで観光しやすく、初めてのイタリアにもおすすめできる街

同じイタリアでもローマやナポリは少しカオスな雰囲気が漂いますが、ボルツァーノは景観がきれいに保たれていて歩きやすい街です。見どころもコンパクトにまとまっているので観光しやすく、初めてイタリアを訪れる人にも十分オススメできます。
「ドロミテのついでにちょっと」という感じでさっと観光する人も多いのですが、もし時間に余裕があれば、ゆっくりと街歩きを楽しんでみてください。イタリアにあってイタリアらしくない、この地方独特の雰囲気を感じることができるでしょう。

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