町がまるごと世界遺産のフィレンツェを定番から穴場スポットまでご紹介!
花咲く都という意味の「フロレンティア(Florentia)」が語源の町フィレンツェは、その名にふさわしくルネッサンス時代には数々の芸術家が腕を競う芸術の町として開花しました。今でも当時の華やかさを色濃く感じることができる、世界遺産の町「フィレンツェ」をたっぷりとご紹介します。
名画の舞台にもなったフィレンツェ歴史地区の定番をご紹介
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竹野内豊主演の映画「冷静と情熱のあいだ」や、ダン・ブラウンの人気作「インフェルノ」はどちらもフィレンツェの街を舞台にした映画です。スクリーンに華を添えるのは、中世の栄華を今に伝える美しい町並みと、一流芸術作品の数々。まずは、誰もが憧れる、花咲く都フィレンツェの中心部に鎮座する世界遺産をご紹介します。
薬局だけじゃない!美しいステンドグラスが必見な駅近のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会
まず、フィレンツェに到着してすぐに訪れてほしいのは、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会です。フィレンツェの中央駅は「フィレンツェS.M.N駅」と表記されますが、このS.M.NはS=サンタ、M=マリア、N=ノヴェッラのことです。駅から道路を渡ってすぐのところにあるこの教会は、9世紀ごろに建てられた礼拝堂を13世紀にカトリック教会ドミニコ会の修道士たちが立て直したのが始まりです。修道士たちは、薬草を調合して薬剤や香水を作り販売した利益を教会運営費に充てていました。それが日本にも支店がある高級イタリア雑貨のサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の起源です。
教会の見どころは、教会内の窓を彩る美しいステンドグラスの数々とマザッチョ作の「聖三位一体」、ジョット作の「キリスト磔刑」です。また、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局本店は教会から徒歩5分ほどのところにありますが、いつも観光客で賑わっています。
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会(Basilica di Santa Maria Novella)
開館時間:4月〜9月は9:00〜19:00(10月〜3月は17:30まで) ※土日は開館時間が異なります
休館日:なし
料金:5ユーロ
住所:Piazza Santa Maria Novella, 18, 50123 Firenze, Italia
そして、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の広場の角にあるジェラート屋さんはフィレンツェ在住の日本人たちにも人気の名店。フレッシュフルーツを使っているので、キウイの種のつぶつぶやパイナップルの繊維まで感じることができます。オススメはヨーグルト&パインの組み合わせです。
ランゴロ・デル・ジェラート(L’Angolo del Gelato)
営業時間:10:00-22:00
定休日:月曜
住所:Via della Scala 2/R | Piazza S. M. Novella, 50123 Firenze, Italia
フィレンツェの顔!花の大聖堂と恋人たちのドゥオーモ
単に「ドゥオーモ」と呼ばれる機会の多いフィレンツェのシンボルは、「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」という正式名称があります。日本語で花の大聖堂という意味を持つこの教会は、「冷静と情熱のあいだ」という小説及び映画の影響で「恋人たちのドゥオーモ」とも呼ばれ、ロマンチックなその名の通り、白と薄ピンク、若草色の大理石の外壁が非常に美しい大聖堂です。
1296年から実に140年以上費やして建設されたもので、大聖堂は拝観料がかかりません。絶対に抑えていただきたい見所をご紹介すると、まずは何と言ってもクーポラの内側部分のフレスコ画「最後の審判」、入り口の真上にある「逆回りの時計」、そして入り口から見て左側の壁にある「ダンテの神曲」の絵画です。この絵画の背景からは、15世紀当時のフィレンツェの街並みを知ることができます。
また、クーポラへ登るのは2016年11月より完全予約制となったため、事前に予約する必要があります。事前予約をしても長い行列ができるほどの人気ですが、その行列を耐えてでも見る価値有りの絶景が望めます。
花の大聖堂(Basilica di Santa Maria del Fiore)
開館時間:10:00〜17:00(曜日によって変動あり)
休館日:1/6
住所:Piazza del Duomo, 50122 Firenze, Italia
料金:無料、クーポラへ登る場合は15ユーロ、事前にサイトより申込みが必要
申し込みサイト(英語):http://en.grandemuseodelduomo.waf.it/museo_dett.php?idtour=8484
メディチ家の繁栄を今に伝えるウフィツィ美術館
もともとウフィツィ美術館は、フィレンツェの行政機関の事務所として1580年に完成しました。つくらせたのは初代トスカーナ公国の大公コジモ1世で、メディチ家という一門のうちの一人です。そしてコジモ1世の息子のフランチェスコ1世が、メディチ家所蔵の美術品のいくつかをこの庁舎に飾り、一般へ向けて開放したのがウフィツィ美術館の始まりと言われています。
時が経ち18世紀半ばにメディチ家が断絶してしまう際、最後の相続人であるアンナ・マリア・ルイーザ・デ・メディチは「メディチ家のコレクションがフィレンツェにとどまり、一般に公開されること」を条件に全ての美術品をトスカーナ政府に寄贈しました。アンナの粋な計らいのおかげで、今日のウフィツィ美術館があるのです。ウフィツィ美術館誕生の背景を知ると、メディチ家にゆかりの深い展示品が多いこともうなずけるでしょう。
例えば美術の教科書に載るほど有名なボッティチェリの「ヴィーナス誕生」は、メディチ家の別荘に飾られるために製作されたものです。同じくボッティチェリの有名作品「春」もメディチ家の依頼により制作されました。具体的な依頼内容は明らかになっていませんが、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチとセミラミデ・アッピアーニの結婚の記念に描かれた可能性が高いと研究家たちは言います。
もうひとつの興味深い作品が、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「東方三博士の礼拝」という作品です。全体的に赤黒く未完成の作品なのですが、この作品が未完のままなのも実はメディチ家が原因なのです。当時ダ・ヴィンチを庇護していたロレンツォは、彼が面倒を見ていた芸術家を外交の手段として使っていました。そのため、ミラノとフィレンツェとの同盟締結の使命をロレンツォから託されたダ・ヴィンチは急遽ミラノへと向かう必要があり、絵画を完成させることができなかったのではないか、と歴史研究家たちは推測しています。他にも、教科書やテレビなどで一度は目にしたことのある有名作品が所狭しと展示されているので、ぜひ足を運んでみてください。
ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)
開館時間:8:15〜18:50(曜日によって変動あり)
休館日:月曜
料金:8ユーロ(特別展を開催している場合は別料金)
住所:Piazzale degli Uffizi, 6, 50122 Firenze, Italia
申し込みサイト(英語):http://www.b-ticket.com/b-ticket/uffizi/venue.aspx
豪華さは世界一?かつて宮殿だった現市役所、ヴェッキオ宮殿
フィレンツェ共和国の政庁舎として14世紀初頭に完成したヴェッキオ宮殿は、フィレンツェ市庁舎として現在も使われています。一時はメディチ家が住居として使っていたこともあり、豪華絢爛な広間がたくさんあります。中でも、500人広間は、その壁画を当時の美術界の2トップであるミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチに競作させたことで有名です。また、2016年の秋に公開されたダン・ブラウンの映画「インフェルノ」公開後は、劇中に出てきた「ダンテのデスマスク」や「地球儀のある地図の間」を目当てに来る観光客も後を絶たないようです。
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観光で訪れる際に是非見てほしいのが、500人広間にあるヴァザーリの「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」という絵画です。たくさんの兵士が描かれているのですが、そのうちの一人が持っている旗に「cerca trova」という文字が隠されているので、ぜひ探してみてください。この言葉はイタリア語で「探しなさい、そうすれば見つけられるでしょう」という意味を持ちます。これはレオナルド・ダ・ヴィンチの幻の絵画の存在を示唆する暗号と考えられ、実際に調査を進めた結果、2011年に、二重構造になっていた隠し壁の存在やそこにダ・ヴィンチの絵と思しき顔料が確認されたのです。
また、ヴェッキオ宮殿のアルフォルノの塔は実はドゥオーモを眺めることができるベストスポットでもあります。高さ、角度共に完璧で素敵な写真が撮れますよ。
ヴェッキオ宮殿(Palazzo Vecchio)
開館時間:9:00〜23:00(木曜は14:00まで)
休館日:月曜
料金:市庁舎エリアは無料、美術館、アルフォルノの塔それぞれ10ユーロ、美術館とアルフォルノの塔共通券は14ユーロ
住所:Piazza della Signoria, Firenze, Italia
申し込みサイト(英語):http://ticketsmuseums.comune.fi.it/1_museo-di-palazzo-vecchio/
お散歩気分で訪れたいピッティ宮殿、サンタクローチェ教会
フィレンツェ歴史地区の面積は、渋谷〜表参道〜原宿とほぼ同じ広さで、その狭さに対して非常にたくさんの観光名所や有名な建造物があることで有名です。歩いて回れることが魅力のフィレンツェ、ぜひ中心部だけではなくもう少し足を伸ばして素敵な世界遺産を堪能してみましょう。
人の手が産み出した芸術と自然の美しさを一度に堪能するならピッティ宮殿!
フィレンツェ中心部から、ヴェッキォ橋を渡って川の反対岸へ渡ってみましょう。しばらく直進すると、雄大な庭園と荘厳な宮殿が姿を現します。ピッティ宮殿は、15世紀半ばにルカ・ピッティという銀行家が建設を命じた宮殿です。コジモ・デ・メディチのライバルだったピッティは、当時コジモが建設を命じていたメディチ宮よりも立派な宮殿を作ることを望み、資金の投入も惜しみませんでした。しかし完成を見ぬままピッティは亡くなり、ピッティ宮殿の建設も頓挫。100年ほど時が流れ、トスカーナ大公のコジモ1世がピッティ宮殿を買取ったことで宮殿の建設も再開されました。完成後、コジモ1世と家族は生活拠点をピッティ宮殿へ移し、それに伴い数々の美術品もピッティ宮殿に集まることとなりました。現在のパラティーナ美術館の所蔵品の核となる品々も、やはり当時時の人だったメディチ家の財力によるものです。
パラティーナ美術館の特徴は、ラファエロ作の「椅子の聖母」や「大公の聖母」、ティツィアーノ作の「悔悛するマグダラのマリア」など女性をモチーフにした絵画が多いところです。コジモ1世は、仕事場であるヴェッキオ宮殿には「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」など士気を高める猛々しい絵画を、プライベートの空間であるピッティ宮殿には柔らかく優しい雰囲気の女性画を置くなど、場所により絵画を使い分けており、空間づくりにも長けていたのかもしれません。
また、コジモ1世の妃は、宮殿の再建と合わせてボーボリ庭園の造営を命じます。この庭園は1982年に世界遺産登録されたフィレンツェ歴史地区の一部であるだけでなく、2013年に新たに世界遺産登録された「メディチ家の館と庭園」にも名指しで含まれています。つまり、1つで2つの世界遺産を獲得した、すばらしい庭園なのです。ちなみに「メディチ家の館と庭園」に指定されたのは市内ではこのボーボリ庭園のみ。他にはフィエーゾレのヴィッラやフィレンツェ県郊外の田舎に散在している別荘や庭園など計14箇所が指定されています。そんなボーボリ庭園のフォトスポットはネプチューンの噴水と緑のトンネルです。
ピッティ宮殿(Palazzo Pitti) ※パラティーナ美術館を含む5つの美術館とボーボリ庭園の6つの施設があります。
開館時間:8:15〜18:50(ボーボリ庭園の閉園時刻は季節により異なります)
休館日:月曜
料金:パラティーナ美術館は8.5ユーロ、ボーボリ庭園は7ユーロ
住所:Piazza de Pitti 1,50125 Firenze, Italia
このピッティ宮殿から徒歩3分の距離には、絶品ケーキ屋さんの「ドルチッシマ(Dolcissima)」があります。早朝から空いているので、朝ごはん代わりにチョコ入りクロワッサンを食べるも良し、ボーボリ庭園のお散歩などで疲れた体へのご褒美にショーケースに並ぶ綺麗なケーキやチョコレートを買うも良しです。
ドルチッシマ(Dolcissima)
営業時間:7:30-20:00
定休日:月曜
住所:Via Maggio, 61R, 50125 Firenze, Italia
イタリア版青山霊園?著名人が眠るサンタ・クローチェ教会
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フィレンツェ中央駅からウフィツィ美術館やドゥオーモを通り過ぎ、フィレンツェの中心地を南東へ進んでいくと、サンタ・クローチェ教会にたどり着きます。フランシスコ会の創設者であるアッシジのフランチェスコ自身によって建てられたという言い伝えがあるサンタ・クローチェ教会は、フランシスコ会において大変重要な意味を持つ教会です。この聖堂にはミケランジェロ、マキャヴェッリ、ガリレオ・ガリレイ、ロッシーニと芸術や科学の各分野の著名人が数多く眠っており、「栄光のパンテオン」という呼び名があるほど。著名人たちの墓碑はどれも華やかで、命を全うした後もなおその存在感は薄れることがありません。
サンタ・クローチェ教会(Basilica di Santa Croce)
開館時間:9:30〜17:00(日曜は14:00から)
休館日:キリスト教の祝日
料金:8ユーロ
住所:Piazza di Santa Croce, 16, 50122 Firenze, Italia
このサンタ・クローチェ教会からすぐの小道に、ジブリ作品に出てきそうな素敵な香水屋さんがひっそりと佇んでいます。店内は素敵な内装と上質な品々に彩られ、幸せなひと時を過ごせること請け合いです。天然素材のハーブで作られた石鹸などはお土産にも好評ですよ。
アクアフロール(AquaFlor)
営業時間:10:00-19:00
定休日:なし
住所:Borgo Santa Croce, 6, 50122 Firenze, Italia
世界遺産の町フィレンツェを語る上で欠かせないメディチ家とは?
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冒頭で、ルネッサンス時代にフィレンツェが芸術の町として開花したことはお伝えしましたが、この時代の繁栄を語る上で欠かせないのが「メディチ家」という一族の存在です。メディチ家の出自には諸説ありますが、一番有力とされているのが「医師」もしくは「薬問屋」です。英語で薬のことをMedicineと言いますが、語源はこのメディチ家です。メディチ家の生業がきちんと記録されているのは14世紀からで、当時は銀行家として財をなしました。それも一介の銀行ではなく教皇庁(世界中のカトリック教会を統率する組織)御用達の銀行だったことからも、いかに当時の金融業界の中心的存在だったかが窺えます。
この銀行業を成功させたのがジョヴァンニ・ディ・ビッチ・デ・メディチという人物です。彼はメディチ銀行の本店をローマからフィレンツェに移すと、銀行業の傍らで市の芸術分野の発展にその資金力及び発言力で貢献しました。15世紀前半には彼の庇護のもとブルネレスキがフィレンツェのシンボルであるドゥオーモの円蓋(クーポラ)を製作します。その後、ジョヴァンニの息子であるコジモ・デ・メディチが家業を発展させ、メディチ家による実質的なフィレンツェ支配を確立させました。そしてそのコジモの孫にあたるロレンツォ・デ・メディチこそが、フィレンツェを開花させた立役者と言われている人物なのです。ロレンツォが庇護した芸術家には、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど、まさにルネッサンスを華やかに彩った一流の芸術家が名を連ねています。
また、現存の建物でいうと、ウフィツィ美術館、ヴェッキオ宮殿、ピッティ宮殿、双方の宮殿をつなぐ秘密の通路であるヴァザーリの回廊、サン・ロレンツォ大聖堂、メディチ家礼拝堂、ドゥオーモなど、フィレンツェの観光名所はメディチ家ゆかりの建物ばかり。現在のフィレンツェは、芸術を愛し資本力を持つメディチ家と、一流芸術家が同時代に生まれた、奇跡の町といっても過言ではないのです。
町中が世界遺産の「フィレンツェ歴史地区」にある建物の中でも、有名で見ごたえ抜群の名所の数々をご紹介しました。フィレンツェは徒歩で歩き回れる町なので、一日にたくさんの観光地を訪ねることも可能です。ぜひこの記事でご紹介した建物を、欲張りに全制覇してみてくださいね。
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文・写真/鈴木(明)
Cover Photo by Tourism Media
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