目を見張るような建築物よりも、寺を取り囲む静謐な雰囲気を求めて、毎年数多くの観光客がこの寺院に足を運んでいます。中でも、紅葉の季節に見事なコントラストをみせる数寄屋造りの山門の美しさは格別。また、法然院は、年間を通じて数多くのコンサートや個展、シンポジウムなどが開催されていることでも有名。夏の京都と言えば猛暑と相場が決まっていますが、周囲を森で囲まれた法然院境内はひんやりとして府内の暑さを忘れてしまうほど。
伏見にあった後西天皇の皇女の御殿を移建したものと言われる方丈には、重要文化財に指定されている狩野光信筆の障壁画 (16 世紀作品) が複数残されています。境内へとつながる数寄屋造りの山門は、秋、周囲の森が見事な秋色に染め上がる紅葉の頃が特に見頃。また、境内には名水として有名な「善気水」も。茶の湯として名高いこの名水、地元の言い伝えでは、忍澂和尚が錫杖を突きさしたところ、突然清泉が湧き出たと言われています。
山門を入ったところには、両側に白い盛り砂がある白砂壇があります。砂壇の間を通る道は水を表し、そこを通過することで、心身を清めて浄域に入ることを意味しているとか。かつては大浴室だったと言われる講堂は、現在ではコンサートや個展、講演会が開催される場として公開され、年間を通じて多くのイベントが開催されています。靴を脱いで、本堂に上がってみると、そこには本尊阿弥陀如来坐像を初めとして、観音・勢至両菩薩像、法然上人立像、萬無和尚坐像などが安置されています。厳かで静謐な日本庭園を眺めながら、のどかな「鹿威し」の音に耳を傾けてみましょう。境内にはまた、河上肇、谷崎潤一郎などの著名な学者や文人の墓が存在しています。
境内の拝観は年間をとおして無料、朝から夕方の拝観時間内は、自由に境内参観が可能ですが、本堂等の建物内は通常非公開のため、春と秋、年 2 回、それぞれ数週間ごと、建物内の有料一般公開がおこなわれています。有料一般公開時の入園は有料です。法然院は、法然を開祖とする浄土宗系の寺院。元は浄土宗内の独立した一本山だったものの、後年独立し、現在は単立宗教法人に指定されています。
京都市左京区鹿ヶ谷に位置し、近くには哲学の道、そして銀閣寺など観光スポットが盛りだくさん。アクセスには、京都市営バスで岩倉行浄土寺下車、山に向かって徒歩で 10 分が便利。この他、京都市営バスで銀閣寺前行南田町下車でもアクセス可能です。