歴史について、製粉業について、珍しい鳥について知ることができるブレナーヴィル風車。白く太い塔に取り付けられた 4 枚の幅広い羽根が回るこの風車は、穏やかなトラリー湾を前に、山並みを背に立っています。
アイルランドで今も立派に稼働している数少ない旧式のブレナーヴィル風車は、19 世紀の製粉用風車を復元したもの。アイルランド国内とイングランドに輸出する穀物を生産するために建設されたこの風車は、大西洋から吹き付ける強い風が羽根を回します。21 m を超える高さでもヨーロッパ屈指の風車です。5 階建ての風車の中に入って、それぞれの部品がどんな仕組みで動いているのかを見てみましょう。小麦粉の製造過程も順に見学できます。
ビジター センターでは、オーディオビジュアル展示でこの施設にまつわる物語を解説しています。かつて、ブレナーヴィルはトラリーの主要港でした。アイルランド大飢饉の時代、数万人が移民としてこの海岸から新しい人生を求めて祖国を離れました。危険極まりない航海だったため、移民船は「棺桶船」と呼ばれたほど。その中で、移民を乗せて大西洋を 16 回も渡り、ひとりの乗客も乗組員も死なせることがなかった帆船ジーニー ジョンストン号は特に有名です。飢饉と移民の物語が、地元トラリーの住民が手作りしたキルトに美しく描かれています。
ここの展望台から望遠鏡を使って、トラリーのさまざまな野鳥の生態を観察しましょう。この場所は「スリナンイアン」 (鳥の道) と呼ばれています。隣接するトラリー湾自然保護区では、野鳥の生育環境で観察できます。キョウジョシギ、コチドリ、アカアシシギのほか、10 月から 4 月にはここをえさ場にする渡り鳥のコクガンの姿も見えます。施設内のカフェテリアに立ち寄って飲み物と軽食で一息ついたら、アイルランドのお土産を買いましょう。
アイルランドには風光明媚な周遊路が数多く走っていますが、ディングル ループ ドライブもそのひとつ。ブレナーヴィル風車はその途中にあります。風車は 4 月から 10 月まで開館しています。入館は有料です。開館期間以外の時期には、外から風車の姿を眺めましょう。
