祝・アジア2位!世界から食通が押しかける“飛行機に乗ってでも行くべき世界の10軒”のレストランとは?
さる2月21日、タイ・バンコクで「アジアのベストレストラン50」というアジア地域のレストランを対象にした2017年のランキング発表および授賞式が開催されました。2016年の3位からひとつランクを上げ、3連覇を達成したバンコクの「ガガン」に続き2位に輝いたのがシンガポールの「レストラン アンドレ」です。
2010年のオープン当初から世界中の美食家に注目され、2011年にはニューヨークタイムズで「飛行機に乗ってでも行く価値のある10軒のレストラン」の1軒として高く評価されました。いまやアジアの美食デスティネーションに台頭したシンガポールで「最高峰」と讃えられるレストランの全貌をご紹介します。
世界が注目するトップシェフは日本に滞在経験あり
チャイナタウンの外れに店を構える「レストラン アンドレ」は、ショップハウス(1階が店舗、2階が住居になった古いマレー建築)が建ち並ぶ一画に佇む、間口の小さなこじんまりしたレストランです。オーナーシェフのアンドレ・チャン(江振誠)さんは台湾生まれの台湾人。13歳で日本に渡り、15歳まで母親が中国料理店を経営する山梨県甲府市に住んでいたそうです。
日本で過ごした少年時代が下敷きとなって日本文化への理解も深く、2015年には有田焼の窯元7社と「ひとつひとつの料理に合わせて最適な器をいちからつくる」をテーマに、料理とマリアージュする器を共創しました。それらの器はシンガポールに運び込まれ、現在も「レストラン アンドレ」で大切に使われ、クリエイティブな料理の美しさを引き立てています。
料理哲学「オクタフィロソフィ」って何?
そんなアンドレさんの料理を味わう前に知っておきたいのが、「オクタフィロソフィ」という独自の料理哲学です。
これは台湾から日本を経て15歳でフランスに渡り、南仏モンペリエの名店「ル・ジャルダン・デ・サンス」で9年かけて料理の基礎を学び、「ピエール・ガニェール」や「アトリエ・ドゥ・ジョエルロブション」「アストランス」(←ここで東京の大人気フレンチ「カンテサンス」岸田周三さんと共に研修!)などそうそうたる名店で研鑽を積むなかで、「アジア人である自分が伝統的なフランス料理をつくる意味」を突き詰めて生まれた考え方。
料理哲学「オクタフィロソフィ」は次の8つの要素で構成されています。その要素とは
- ユニーク めずらしい食材や限られた時期にしか手に入らない素材の組み合わせ
- ピュア 調味料なしで素材そのものの味を楽しむ
- テクスチャー 食材から引き出した多彩な食感を味わう
- メモリー 思い出の料理の味
- ソルト 海がもたらす大いなる恵み
- サウス アンドレさんの料理人としての故郷ともいえる南仏の太陽とおおらかさから連想する、フレッシュなで酸味の効いたさわやかな後口
- アルチザン 生産者への敬意と職人の技
- テロワール 母なる大地への賛歌
の8つ。「レストラン アンドレ」の料理もサービスも、すべてこの考え方がバックボーンとして貫かれています。たとえば日本から持ち帰った「トロ箱」に盛り込まれた前菜には、「海の恵み」がふんだんに使われていました。
苦手な食材でゲストの先入観を打ち壊す
少年時代には芸術家を志していたというアンドレさん。現在も自身のレストランのインテリアデザインを手がけたり、粘土細工をつくったり、作陶をしたりする彼は「レストランは芸術の集大成」と考えています。
小さなショップハウスながらテーブル間をゆったり取り、モダンアートのかわいらしいヒツジ(実は女性のバッグなど荷物を置く台)がひょっこり顔をのぞかせる温かみのあるダイニングは、ゆったりとくつろげるソファ席を配するなど居心地のいい空間。こういった内装にもすべてアンドレさんの感性が反映されています。
料理だって、アンドレさんの豊かな美意識がすみずみまで張り巡らされています。ランチもディナーも(アレルギーや宗教上の理由など食べられない食材がある場合はもちろん対応していただけますが)、基本的におまかせのみでアラカルトメニューの用意はなく、ランチは5皿コース(198シンガポールドル、約1万7000円)と8皿(350シンガポールドル、約2万9000円)の2コース、ディナーは「オクタフィロソフィ」コース(350シンガポールドル)のみ。
世界のハブ空港を持つ輸入国家であるシンガポールらしく、食材は世界中から集められ、日本から届いた新鮮な魚介も数多く登場しました。「海と山のマリアージュ」をテーマに、北海道産のホタテの“ウマミ”を引き出し、山のキノコと合わせた料理もそんなひと皿です。
また、コースの中には、「これまで常に挑戦を続けてきた」というアンドレさんらしく、ゲストにいたずらを仕掛けるような、大胆でアグレッシブな一面もちらり。
それが垣間見えたのは、「レストラン アンドレ」で結婚10周年を祝うためにスペインからシンガポールへやって来たという夫婦のメインディッシュでした。ヨーロッパを中心に有名なレストランを食べ歩いているという奥様は、あらかじめサービススタッフから好き嫌いや食物アレルギーを問われたとき「食べられないわけではないけれど、鶏の胸肉だけはどんなに有名なシェフの料理でもおいしかった試しがない」と言っていたのです。そんな彼女のメインディッシュは、なんと鶏の胸肉。やるなぁ、アンドレさん。しかも一般的に、黒い紙のようで色や形状が西洋人には好まれないといわれる海苔を巻いています。
「ソルト海がもたらす大いなる恵み」である海苔(有明産)でうま味を加え、ほんの少し塩を振っただけの鶏胸肉は、パン生地で包み抜群の状態で焼き上げられていたため、しっとりとジューシーでフレッシュな香りに満ちています。これには件の奥様もびっくり。「あなたの料理を味わうためだけに、シンガポールに通いたい」と大絶賛していました。
コース料理で味わえるのは気品に満ちた美しさ
料理を締めくくるデザートでさえ、アイスクリームの下に敷かれた美しいピンクのシャーベットを割ると、驚くような仕掛けがなされている…と、最後まで遊び心がたっぷり詰め込まれていました。コース全体を通してみると、フランス料理の技術を踏まえたイノベーティブな料理で構成されています。アンドレさんが生み出した哲学が貫かれているからでしょうか、料理の構成にしっかりとした骨格が感じられ、遊び心のある演出がときどきはさまれつつも、いまトレンドの「何がどうなっているかわからなくて頭で楽しむ料理」と違って、本能的なおいしさに身を委ねられるような安定感がありました。いまも思い出すのは、料理だけでなくアンドレさん自身にも共通する品格と食後の余韻として感じた「透明感」です。
いまや世界中から引っ張りだこで大忙しのアンドレさん。彼を慕ってこの店で修業をしたいという未来のシェフは引きも切らず、キッチンスタッフは多国籍なメンバーで構成されています。私が訪れた日はラッキーにもご本人が厨房にいたため、ゲストはシェフと記念撮影をしたり、レシピ本にサインをいただいたりしていました。バースデーやプロポーズをしたゲストには、手書きのメッセージをプレゼントというサプライズも。「レストラン アンドレ」のようなスターシェフのレストランでは、こんな風にシェフに会うのも楽しみのひとつです。
ちなみに、予約は日本から公式ウェブサイトを通じてとることができます。予約困難な人気店であることは事実ですが、人数が4人以下など少なく、少し先の日付で平日であれば、予約が取れることも多いそう。シンガポール旅行が決まったら、真っ先に予約するのがおすすめです。
そうそう、「レストラン アンドレ」を“飛行機に乗ってでも行く価値のある”と評したニューヨークタイムズのあるニューヨークからシンガポールへ行くにはトランジットを含めて1日がかり。それに比べると東京からならたった7時間です。世界が注目するレストランを体験しに、シンガポールまでひとっ飛びしてみませんか。
Restaurant André(レストラン アンドレ)
公式サイト(英語)http://restaurantandre.com
住所:41 Bukit Pasoh Road Singapore 089855
電話:65 6534 8880
営業時間:水曜・金曜12:00〜15:00、火曜〜隔週日曜19:00〜22:00
定休日:月曜・隔週日曜
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