ケラケラと笑い声が聞こえる!?南インドのケララで本場アーユルヴェーダ体験
約5000年の歴史をもつインド伝統医学であるアーユルヴェーダが、数年前から世界中でブームとなっています。しかし、本来のアーユルヴェーダとは、単なるマッサージとは異なり、ライフスタイルから食生活に至るまで、個人が健やかに生きていくための知恵を与えてくれる人生ガイドのような存在です。心身健康状態だけでなく、とりまく環境との調和をも考慮した全体論の哲学ともいえる医学なのです。
アーユルヴェーダの本拠地である南インドのケララ州に存在する知る人ぞ知るアシュラム(修行寺)では、最短3日間から最長で3週間までの宿泊付トリートメントプログラムが用意されています。個人の体質や体調に合わせ、スワミと呼ばれるグル(サンスクリット語で「指導者」を意味する)による診断のもと、食事療法から薬草内服、薬草外用(薬草を調合した全身オイルトリートメント)まで受けられます。大自然に囲まれた平穏なアシュラムで体験した、ぜいたくで究極のトリートメントをレポートします。
笑顔の絶えないケララ住民
インド北部にある首都ニューデリーからやって来た観光客なら、このケララの人々の優しさや人なつっこさに初めは戸惑うかもしれません。ふくよかな女性たちはみな、サリーやパンジャビ・ドレスに身を包み、暖かい太陽のような笑顔で歓迎してくれるでしょう。また、道を歩いていると至る所でケララならず「ケラケラ」と陽気な笑い声が聞こえ、かわいいい子どもたちからは握手や写真を求められ、なんだか有名スターになったような気分にさせられるのも南インドならではでしょう。
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photo by Kerala Tourism[/one_half]
[one_half_last]そんなケララには、数世紀に渡り人々の病を治してきた伝説的なアーユルヴェーダ医師とその継承者たちが存在します。今日のインドで、アーユルヴェーダを献身的に守り抜いている唯一の州といえるのではないでしょうか。国際空港もあるケララ州の大都市、トリヴァンドラムから公共バスとオートリクシャー(三輪タクシー)を乗り継ぎ、自然に囲まれた平穏なアシュラムにたどり着きました。[/one_half_last]
治療、礼拝、修行の三大柱
このアシュラムの特徴は、アーユルヴェーダのトリートメント提供だけでなく、カラリパヤットというケララ伝統武術の道場や、市民が日常的に礼拝するお寺があり、治療、礼拝、修行の三大柱を掲げている点です。精神世界にも通じ、武術師範でもあるスワミが統括しています。また、大きな敷地内にはオーガニック野菜を栽培している畑もあり、そこで採れた新鮮な野菜が調理され日々の料理となって出てきます。
[one_half]ひと通り敷地内を案内してもらい歓迎のチャイをいただいていると、まもなくスワミに呼ばれ、近くにあった椅子に座るように言われました。そこでスワミは私の手を取って脈を読むように計り、手のひらや眼の中を診ながら私の気質や体質、健康状態、さらには今までの人生までをも的中させました。そのスワミの診断に従って、数々の薬草を調合したトリートメントの始まりです。[/one_half]
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宿泊コテージから。向かいに見える建物がトリートメントルーム。photo by Ryoko Hori[/one_half_last]
カルマをも洗浄するトリートメント
アーユルヴェーダの具体的なトリートメント方法は、食事療法やパンチャカルマと呼ばれる浄化・排出療法などさまざまです。パンチャカルマの一環として、例えば、アビヤンガと呼ばれる全身オイルマッサージは、滞ったリンパや血行を促進し、乱れた神経を整えつつ浄化します。また、シロダーラと呼ばれるヘッドバスは、第三の眼(おでこ辺り)に暖かいオイルを流し続け、脳を癒やしつつたまった毒素を排出する目的があります。どれも本場インドでしか入手できない自然な薬草が調合されたオイルを使用しています。
さらに、アーユルヴェーダは心身のケアだけでなく、カルマ(その人のおこない)をも洗浄すると言われています。ちなみに一度の全身トリートメントに使用するオイルは、1リットルにも2リットルにもなります。トリートメントが終わるとその薬草オイルを体内に浸透させるため、1時間ほどオイルは流してはいけません。
アシュラムでの貴重な滞在
朝5時頃から敷地内でチャントが流れ、朝食はケララ産物のココナッツをたっぷり用いたおいしい菜食カレーが用意されていました。私が滞在していた間は、スペインとルーマニアからの外国人武術修行者が2人いて、さらに、地元の患者さん夫婦も含めて5人でゲスト用の食堂で一緒に食事をいただきました。朝食後にアビヤンガなどのトリートメントがあり、午後は自由時間。ヨガや読書、瞑想などをして過ごしました。夕方からは、お寺で礼拝が行われるのでそれにも参加し、ヒンズー教というあまりなじみのない礼拝でしたが、宗教枠をこえて人として心に響く何かを感じました。
不思議なことに毎晩夢を見て、その夢の中にはすっかり忘れてしまっていた過去の出来事や、忘れようとしていた苦い思い出などがありありと出てきました。これがいわゆるカルマの洗浄なのでしょうか。洗い流すには、その洗うべきものの存在をまず認識すること。認識、つまりは表面に出てくる過程を経て、浄化(汚れや濁りを取り除くこと)が行われるのでしょう。このように体だけでなく、精神の奥底で滞っていたものの存在を再確認できました。
photo by Fabrice Florin
旅の面白さ
心と体だけでなく、行動やとりまく環境も含めた全体の調和が、人々の健康を導くと考えられているアーユルヴェーダ。われわれ人間は自然の一部であり、決して人間が自然を支配したり、調和やバランスを無視して存在してはいけないと実感させられた貴重な体験となりました。魅惑の国、インド。それゆえ、気軽に旅行できるような国ではないかもしれませんが、まずは穏やかな南からインドに足を踏み入れてみてはいかがですか。日常生活では決して体験できない、旅の本当の面白さがインドで待っていることでしょう。
滞在したアシュラムのHP | Kalariyil Dharmikam Ashram
Cover photo by Adams Homestay Cochin
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