投稿者 : トラベル ライター、投稿日 2019 年 11月4日

餃子好きにとっての天国は高知にあった。屋台餃子を食べ比べした一夜の話

餃子が日本の国民食と言っても差し支えない時代になったように思う。街には王道から変わり種までさまざまな餃子屋がひしめき合い、かと思えば中華屋にも、ラーメン屋にも、居酒屋にだって餃子は置いてあるのだ。たくさんの人に食べられているという意味では、文句なしに国民食だろう。

そんな多くの人に愛される餃子だが、高知県に餃子好きにとっての天国があると聞いた。どうやら、高知には屋台で餃子を提供しているお店があり、飲み会のシメにそこで餃子を食べる文化があるのだそう。

餃子好きとしては、考えるだけでもよだれが出てくるようなシチュエーション。体験しないという選択肢はもはやなく、すぐに高知へと飛ぶことになった。

高知県高知市にある屋台ロード

屋台の場所は、高知市の歓楽街・廿代(にじゅうだい)町にある「グリーンロード」と呼ばれる200メートルほどの市道を中心としたエリア。

夕方くらいから屋台が組み立てられ、そのあと早朝まで営業される屋台は、近くの居酒屋から出てきたお客さんを筆頭にたくさんの人でにぎわうそうだ。

到着したときはまだ組み立て前の時間だったため、近くのお店で時間をつぶすことに。本来ならシメのタイミングで行くのが良いのだとは分かっているのだが、餃子好きとしては餃子をメインで食べたい。

待ちに待った開店時間。屋台餃子の食べ比べをしてみる

はるばる高知まで来たからには、やはり屋台餃子の食べ比べをしたいところ。屋台は7軒ほどあるが、行ける数だけ回ってみようと思う。

一軒目は、屋台ロードから路地を一本入ったところにある『安兵衛』。東京・恵比寿でも人気の餃子屋のため、知っている人も多いかもしれない。「屋台と餃子とビールは高知の文化です」というパンチのあるキャッチコピーを引っ提げ、東京で高知餃子を広めた『安兵衛』の本店的存在。筆者が高知餃子に興味を持ったのも、恵比寿で『安兵衛』の餃子を食べたからだ。

定休日だったらどうしようなんて不安が杞憂で終わりひと安心。高知の屋台餃子の元祖である安兵衛は、間違いなく今回の目玉。

やはり高知でも「屋台餃子」と言えば安兵衛のようで、かなり早い時間に到着したにも関わらず、すでに満席。30分以上待ってようやく席に着くことができた。

餃子を注文し、ビールを飲みながら待機。タイミングが良かったらしく、注文してから数分ですぐに餃子が届いた。

この黄金色。なんて美しい餃子だろう。『安兵衛』の餃子は、食欲を刺激するという意味で一つの正解に到達していると思う。揚げ餃子のような見た目の理由は、油をたっぷり使って揚げ焼きにしているから。お客さんの目の前で焼き上げるスタイルは、屋台だからこそ。

東京でも食べられる餃子とはいえ、筆者は現地で実際に食べることに憧れていた。なんせ屋台餃子と言うくらいだ。東京の店舗で食べるより、高知の屋台で食べた方が美味しいと思うのは普通のことだろう。

安兵衛の餃子は一口サイズということもあり、ぱくぱくと箸が止まらない。薄皮の餃子を揚げ焼きにすると、こんなにもサクサクになるのか。食べると、野菜多めの餡の甘みが口に広がるが、豚肉の存在もしっかり主張してくる。見た目に反した優しい味なので、シメの食べ物として人気が出たのもうなづける。

屋台で食べていると、行列待ちの人たちの視線が常に刺さるので、ゆっくり食べてもいられない。帰り際に客層を観察したが、意外にファミリーが多いなと感じた。

屋台安兵衛
住所:高知県高知市廿代町4-19
電話番号:088-873-2773
営業時間:19時~翌3時 ※土曜日のみ、19時~翌4時
定休日:日曜日

安兵衛から屋台ロードに戻り、二軒目に立ち寄ったのは『やまちゃん』。

ここもやはり揚げ焼き餃子だったが、安兵衛とはまた違ったタイプの餃子だった。

行列ができていた安兵衛と比べると、屋台ロードの屋台はあまり時間を気にせずしっぽりと飲める。落ち着いて時間を過ごすことができるため、先ほどよりも屋台の風情を楽しみながら餃子を食べることができた。

このあたりから、周囲の居酒屋から出てきて屋台に向かってくるお客さんの姿がちらほら。店主に聞くと、最近は地元の人じゃなくて、県外から来るお客さんがほとんどとのこと。

カウンター越しに店主と会話しながら、たまに餃子を食べる。じんわりと汗をかいた額、屋台の隙間から入り込む外気に涼しさを感じる。ふと周りを見渡すと、次の店を目指して歩く呑兵衛たちの姿。屋台餃子、少し分かってきた気がする。これは確かにシメに来たくなる。

やまちゃん
住所:高知県高知市廿代町6
営業時間:20時~

三軒目は『虎ちゃん』。「〇〇ちゃん」という店名が多いのはなぜなのだろう。

虎ちゃんの餃子

『虎ちゃん』では、『安兵衛』『やまちゃん』の揚げ焼きと違い、焼き餃子が出てきた。一般的な焼き餃子とも違い、これは餃子の底面ではなく側面が焼かれている。独特だ。

女将さんに聞いてみたところ、揚げ焼き餃子は高知餃子の特徴というわけではなく、『安兵衛』と、そこから独立した人が始めた『松ちゃん』の餃子のスタイルとのこと。

『虎ちゃん』は女将さんの代になってからで30年以上、屋台自体はもっと前から開かれていたらしい。当時は、今みたいにほとんどの屋台で餃子を提供しているわけではなかったが、『安兵衛』の餃子が人気を博したことを機に餃子目当てのお客さんが増加し、餃子を提供する屋台が増えたのだ。そう考えると、屋台餃子を生み出したのは『安兵衛』だが、育てたのはお客さんなのかもしれない。

「お客さんに『餃子ありますか?』って聞かれて『ありません』って言うと、本当に帰っちゃうんだもん(笑)」と、お茶目な女将さん。

ちょうどお客さんがいなかった時間だったこともあり、ここでは女将さんからゆっくりお話を聞いた。

今でこそ屋台はこのエリアにある7軒だけだが、以前はもっとたくさんあったこと。江の口川沿いや電車道など広いエリアに屋台が開かれていて、今のエリアはその外れに位置していたこと。川のふちの屋台が最もにぎやかだったが、公園や病院、地下駐車場ができたことで車の行き来が増え、自然と減っていったことなど。

時代に合わせて街の整備が進んだ結果、閉店や異動を余儀なくされる屋台が増え、結果的にこのグリーンロードだけが残った、ということらしい。

この場所で50年以上前から存在している屋台だ。さまざまなルールが制定される前から営業していることもあり、街の整備が進むにつれて、何度も存亡の危機は訪れたのだろう。今年に入ってからは、屋台が場所代を払っていないことから「不法占拠」扱いとなり、大きく話題になった。しかしこれがきっかけで、市は観光資源としての屋台の価値を認め、今後はエリアや営業時間など含め、存続のための条件整備を進めていく方針を発表した。前向きな方向でまとまったからか、女将さんはスッキリした表情をしていたように思う。

最後にラーメンをいただいて帰り支度をしていたら、女将さんから「『松ちゃん』の餃子は食べて帰った方がいいよ」と一声。若干の満腹感はあったが、もう少しだけ夜を続けようと思う。

虎ちゃん
住所:高知県高知市廿代町7-25
定休日:不定休

『松ちゃん』は、『安兵衛』と双璧をなす人気店。やはり他の屋台と比べて混んでいたが、奇跡的にカウンター席が空いたため、すぐに入店できた。

名物の餃子はやはり薄皮の揚げ焼き。『安兵衛』よりは重そうな印象だったが、見た目の予想を裏切り、ものすごく軽い。散々餃子を食べ歩いた後だというのに、一軒目かのようなペースで完食してしまった。

『安兵衛』よりもキャベツを中心とした野菜の甘みを感じた。タレに酢の存在感が強く、さっぱりした味だったのも、さらっと食べられた理由だろうか。

飲みのシメというよりは、餃子のシメになってしまったが、疑う余地がないほどシメにふさわしい餃子だった。

松ちゃん
住所:高知県高知市廿代町6-27
営業時間:20時~3時
定休日:日曜日

時代に合わせて変化をしながらも、残り続ける屋台文化

もしかしたら、どこかのタイミングで無くなっていたかもしれない、高知の屋台文化。

現在のお客さんは、観光客など県外の人がメインではあるが、もともとは地元の人にとって心の支えのような場所だったそう。だからこそ、「無くしたくない」という声も根強い。ただ、確かに時代に合わせた変化は必要だろうと思った。いち餃子好きとしては、残り続けてほしい。そして、また行きたい。

すばらしい餃子と、屋台の人や空間のあたたかさを堪能し、大満足の一夜だった。餃子好きにとっての天国は確かに存在した。この記事ではその事実をただただ伝えたかった。

文=早川大輝

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