東京に来たらランチで食べたい、手軽に楽しめる「美味しい鮨店4選」
「東京の鮨店」と聞くと、皆さまはどのようなイメージを抱かれるでしょうか?
おそらく、大半の方が「高級」もしくは「予約困難」と言ったイメージを抱かれるのではないかと思います。私も、友人に美味しい鮨店をオススメした際に「何カ月前なら予約を取れるの?」と質問されることがしばしばあります。
筆者自身、ライフワークとなっている鮨巡りをする前は、「お値段が高い」「ハードルも高い」というイメージを持っておりました。
実際、東京の飲食店は“飲食バブル”の様相を呈しており、特に鮨に関しては、価格と予約難度の高騰が激しいジャンルとなってきています。
しかし、これは一部の話。実際には「リーズナブル」で「予約が取りやすい」魅力的なお店も多々あります。イメージに引きずられて東京の鮨が敬遠されてしまい、味わっていただく機会が増えないのは寂しい限り……。その認識を変えるべく、いち鮨ファンとして、今回筆を執った次第です。
江戸前の握り鮨が登場する前の江戸時代、“寿司”といえば関西流の「押し寿司」や「棒寿司」が主流でした。しかし、鮨職人・華屋與兵衛(はなやよへえ)によって握り鮨が発明された瞬間、握り鮨は“せっかちな江戸ッ子”の心をガッチリとつかみました。屋台がベースで、サッと4~5貫食べて、サッと帰るスタイル。そこから人気が高まり、今に至ります。
今回は「鮨はハードルが高い」というイメージから脱却できるような、「ランチに気軽に伺える、美味しい鮨店」に絞ってみたいと思います。
取り上げるのは以下の4店舗。予算は、2019年7月現在のお昼の「一人前の価格」です。
・鮓かね庄(浅草) ……予算:1,900円〜
・鮨弁慶 海(銀座)……予算:3,000円〜
・鮨み富(銀座)……予算:4,000円〜
・鮨一條(東日本橋)……予算:5,000円〜
確かに、普段の生活の中でのランチと比べると、高い金額であるのは間違いありません。しかし、「東京の鮨といえば、少なくとも1万円、大体のお店で2万円を軽く超えてしまう」……というイメージを抱かれることが多くあります。そのため、「予想を裏切ってリーズナブル」な価格帯だと思います。
「東京を訪問して食べる鮨」を選ぶのならば、せっかくの機会として少しプラスしても外れのないお店をオススメしたいと考え、江戸前の仕事(=調理法)が用いられていることと、シャリ(酢飯)が美味しいことの2つを基準とさせていただきました。後者は、鮨の美味しさの生命線でもあります。
それでは、実際のお店紹介に入らせていただきたいと思います。
江戸前の王道をリーズナブルに「鮓 かね庄」(浅草)
こちらは浅草の「観音裏」と呼ばれるエリア、つまり浅草寺の裏手にあります。街自体が落ち着いた雰囲気のエリアですが、お店もまたしかり。フグ料理店を改修した店内は渋く、床には打ち水が放たれ爽やかです。
お昼の価格は何と1,900円! 上のコースでも2,800円と、上質な鮨店としては破格ともいえる価格です。それでいて、いただける鮨は江戸前の王道を行く鮨。閉店した名店「寛八」ゆずりの握りをリーズナブルにいただくことができます。
シャリの酢は米酢のみを使用し、酸味と塩気は穏やか。砂糖を使用しつつも、甘みは上品です。そして、炊き加減は硬め。誰しもが安心して美味しくいただけるシャリだと思います。
「お決まり」(小さめのコースのこと)は、2,800円という価格であっても満足させてくれるタネの構成です。鮪(マグロ)、星鰈(ホシガレイ)、赤貝(アカガイ)など高級なタネのほか、小鰭(コハダ)や穴子(アナゴ)といった王道の江戸前のタネもオススメです。
鮓 かね庄
住所:東京都台東区浅草3-33-9
TEL:03-3871-6081
営業時間:火曜~土曜 11:30〜14:00(LO13:30)、17:00~23:00(LO.22:30) 日曜・祝日 11:30〜14:00(LO13:30)、17:00~22:00(LO21:30) 月曜、第1・第3日曜休
佐渡島と江戸の幸福な出会い「鮨弁慶 海 銀座店」(銀座)
こちらは東銀座のビルに入っている、穴場の鮨店。お店の目印は看板に記された赤いマークは、新潟県・佐渡島を模したもので、その通り佐渡島の幸を用いる江戸前鮨店です。
ランチの価格は3,000円と5,000円。銀座の好立地でこの価格は、大変貴重だと思います。それでいて、握り手の山崎大将は熟練の職人さん。かつては六本木で創作的な握りを出されていたようで、知る人ぞ知る名手です。
現在は創作的な仕事は穏やかに活用されており、江戸前をベースに個性的な握りを頂くことができます。特に塩麹を用いた〆は唯一無二です。
シャリは米酢と佐渡の藻塩のみ。砂糖は不使用で、米の甘みを感じさせてくれます。タネは佐渡の地魚が用いられたり、鮪の大トロは燻製にされたりと、他にはないものが多く、面白いです。佐渡島と江戸(東京)の幸福な出会いといえるでしょう。
鮨弁慶 海 銀座店
住所:東京都中央区銀座4-12-1 GINZA12 5F
TEL:03-6278-7050
営業時間:11:00〜14:00、17:30〜23:00 日曜・祝日休
清々しい店内で昔ながらの格別さを味わう「銀座 鮨 み富」(銀座)
こちらは銀座のど真ん中にある、江戸前中の江戸前と言える鮨店です。少々古めかしいビルを入っていくと、2階にある店内は非常に清潔で、ヒノキのカウンターが清々しい。また、窓が大きく開放的です。
親方は、大正時代から続く新富寿し(閉店)に22年間も勤めた後に独立された方。それ故に昔ながらの仕事に精通されており、〆ものや煮ものが特に格別です。
シャリはごくわずかに甘みを感じ、酢と塩気は控えめです。昔ながらのお店のシャリといえば温度が冷たかったり粘度が高かったりするのですが、こちらのシャリはしっかり現代で通用するシャリだと思います。
ピンポイントな話となりますが、大変昔ながらの鮨「槍烏賊(やりいか)の印籠詰め」を出されている点もうれしい限りです。
銀座 鮨 み富
住所:東京都中央区銀座5-10-11 川島ビル2F
TEL:03-6263-9889
営業時間:11:30~21:30 無休
公式サイト:http://mitomi-sushi.com/
古典的な仕事をモダンに、硬派に楽しめる「鮨 一條」(東日本橋)
こちらは東日本橋(馬喰横山)にある粋な鮨店です。立地、内装ともに昔ながらの落ち着く鮨店といった風情。東京都以外の人にとって、この界隈は鮨のイメージがないかもしれませんが、実に良い時間を過ごさせていただけます。
ランチのお決まりは5,000円から用意されており、おまかせは10,000円の模様です。筆者は「一通り」=あるもの全てでお願いしたのですが、何と25種類のタネを用意されており、1貫あたり約850円程度と、都心で夜にいただく一般的な鮨と比較すると破格でした。
シャリに米酢を使うお店を紹介してきましたが、こちら一條さんは赤酢のみ。2種類の赤酢をブレンドしていて、砂糖は不使用で酸味がしっかり利いています。それでいて塩気は強過ぎないので、食べ疲れしないシャリなのです。
タネは江戸前の王道を行く〆もの、煮ものがいぶし銀の仕事ですが、カワハギや黒ムツなどモダンなタネも使用されます。古典的な仕事をモダンに、しかしあくまでも硬派に楽しませてくれる、実に東京らしい名店だと思います。今回紹介したお店の中では一番高額ですが、満足度は高いお店です。
鮨 一條
住所:東京都中央区東日本橋3-1-3 奥田ビル 1F
TEL:03-6661-1335
営業時間:12:00~14:00、17:30~21:30 水曜休
「美味しいお店を訪れる」ことが決まっている旅は魅力的
現在、鮨はめまぐるしい進化を遂げ、江戸時代のようにサッと食べるスタイルから脱却しております。そして、江戸時代はもちろん戦前・戦後にはいただけなかったような洗練された握りが主流となっています。
この状況で筆者が思うのは、現在の鮨や鮨店はスタイルが細分化されているのではないかということです。高級と思われがちな鮨というジャンルは、意外にも細分化されているため、予算やシチュエーションによって使い分けることが可能といえます。
また、単に安ければ「コスパ(コストパフォーマンス)が良い」とされる状況はいかがなものか? とも感じております。私は、コストパフォーマンスの本質とは、「良い食材を用いた美味しい料理」が「相対的に安い」ということだと考えています。東京で食べるべき鮨とは、ネタの大きさのみを強調したり、むやみに食べ放題を喧伝したりするお店ではなく、真っ当な江戸前仕事を施した鮨だと思います。
最後に旅行に関して僭越ながらアドバイスを。旅程を決めたタイミングで、同時にお店の予約もしておくと良いと思います。予約なしでの訪問、直前に予約をするケースは悪いことではありませんが、旅行先で美味しいものを食べようとするなら、前もっての予約をお勧めします。「美味しいお店で確実に食べられる」という気持ちは、旅を豊かにしてくれると感じます。
自分の場合でいうと、お店の予約を先に取り、その後にお店の立地を考慮しつつフライトやホテルを押さえます。……これはさすがに極端かと思いますが、美味しいお店を訪れることが決まっている旅は、とても魅力的です。ぜひともご参考になりましたら幸いです!
◆
文:辣油は飲み物……20代後半に鮨の魅力に魅入られて食べ歩きを開始。鮨専門のブログやWebサイトが無いことに気付き、2015年2月に「すしログ」を開設。全国を飛び回り、鮨、日本料理、和菓子などを食べ歩いている食の旅人。経費や「ゴチ」の世話にはならず、身銭を切って消費者目線でリアルな意見を伝えている。
編集:はてな編集部
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