伝説の杜氏が造る酒と、北陸発のイノベーティブレストラン。新しい小松の食文化を体験!
北陸といえばグルメの宝庫。蟹やお寿司がまっさきに思い浮かびますが、おいしいものはそれだけではありません。さらに一歩進んだ食を楽しませてくれるスポットが、石川県小松市にあります。
伝説の杜氏が手がける酒蔵では極上の日本酒を楽しみ、撚糸工場をリノベーションした一軒家レストランではシェフの独創的な料理を堪能。たんなる郷土料理や地酒に終わらない、新しい小松の食をご紹介します。
伝説の杜氏が生み出す極上の日本酒をテイスティング!
伝説にして現役の杜氏といえば、農口尚彦さん。1980年代には吟醸酒を市場に送りブームを生みだしたり、山廃仕込みの技術を復活させたり、長年日本酒界をリードし続け、現代の名工にも認定されている杜氏です。
そんな農口杜氏の技術や精神を次世代に継承するべく、2017年に生まれたのが「農口尚彦研究所」。2年のブランクを経て84歳で酒造りの最前線に戻った農口杜氏が中心となり、ファンをうならせる日本酒を造っています。
農口尚彦研究所が位置するのは、小松空港から車で30分ほどの豊かな田園地帯のなか。洗練された外観は従来の酒蔵とはかけ離れていて、ちょっと驚くかもしれません。この地が選ばれた理由は、上質な米と井戸から汲み上げる清らかな伏流水、さらに寒い時期に日本酒を仕込む寒造りに理想的な冷涼な気候であること。モダンな建物は、しっくりと里山に溶け込んでいます。
まずはギャラリーを見学してみましょう(見学は、後述する「酒事」を予約した人のみ)。ここには、日本の酒造りの歴史や、農口杜氏の歩みを記した年表も展示されています。そしてファン必見、農口杜氏が愛用しているノートも!このノートには、温度、湿度、米の水分量などが細かく記録されているのだそう。杜氏というと「勘が頼り」というイメージがありますが、伝統を守りながらも科学的に酒造りをするのが、農口流なのです。
ガラス越しに見える酒蔵には、仕込みを行うタンクがずらりと並んでいます。思ったよりも整然としたイメージ。温度や湿度管理を徹底した設備は、先端のものを導入しています。これも農口杜氏のポリシー。
お待ちかねの利き酒「酒事(しゅじ)」は、テイスティングルームの「杜庵(とうあん)」で。窓の外に広がる田園を借景に、コの字型のカウンターを配置した造りは、茶室をイメージしています。ちなみに利き酒を「酒事」と名付けているのは、お茶でもてなす「茶事」になぞらえたもの。こうしたコンセプトは、小松が茶道流派・裏千家ゆかりの地であることに着想を得ているのだそう。こんな空間で利き酒を体験すれば、日本酒がもっと好きになってしまいそうです。
「酒事」では、お酒そのものの比較だけでなく、九谷焼、陶器、グラスなど酒器による味わいの違いも比べます。テイスティングに用いられる酒器は、人間国宝の吉田美統氏による盃や、一子相伝の九谷毛筆細字、陶窯田村四代目の田村星都氏による盃など、目でも楽しめるものばかりです。
お酒に合わせたオリジナルの肴も絶品。イカの粕漬けやヘシコ(脂がのった冬の鯖を糠と塩で仕込み、約1年、樽の中で漬け込んで熟成させたもの)など、地元産の発酵食を使った肴とともに、気づけばすっかり夢中に……。
利き酒とともにいただくのは、珠洲(すず)焼の水差しに入れ一晩寝かせた白山連峰からの伏流水。地下90mから汲み上げたもので、日本酒の仕込みにも使われる名水です。
「酒事」は1日1回(14時15分~、約90分間。水・木曜は定休)の完全予約制。料金は5,500円、ドライバーなどお酒を飲まない人は、3,300円のノンアルコールコース(前日までに要連絡)も用意されています。予約は公式ウェブサイトの無料会員ページ内で受け付けており、国内外からのファンで常にいっぱい。小松旅が決まったら、早めの予約は必須です。
農口尚彦研究所(杜庵)
住所:石川県小松市観音下町ワ1番地1
電話:0761-41-1227
URL:http://noguchi-naohiko.co.jp/
小松発、革新的な料理を発信するレストラン
ここ数年、料理の新しいジャンルとして注目されている「イノベーティブ・フュージョン」。イノベーティブとは革新的、つまり、既存の枠にとらわれないという意味を表します。その世界観をたっぷりと楽しませてくれるのが「SHÓKUDŌ YArn (ショクドウ ヤーン)」。ここで食事をするために、はるばる遠方から訪れる人もいるほどの人気のグルメスポットです。
レストランの外観はとてもシンプル。店内に入ると、樹齢200年のオリーブの木が茂る明るい中庭に迎えられます。ランチ、ディナーともに完全予約制のコース。ともすれば、かしこまってしまいますが、ガラス越しにキッチンが見えて、とてもリラックスした雰囲気です。
さあ、これからめくるめく驚きのコースが始まります!メニューを見ても、どんなものかははっきりと分かりません。一皿一皿に付けられた言葉遊びのようなメニュー名は楽しく、料理を食べ始めると「なるほど!」と頷いてしまうはずです。
たとえば、「ちょこっと牛すじ煮込み」。煮込み屋さんのあのトロトロの牛すじ煮込みを想像していると…登場したのはまるでシャーベットのような料理。これは、牛すじの煮込みをエアインチョコにしあげたもの。口に含むとしゅわっとした舌ざわりと甘みが心地よく広がります。
「炭火焼き朝採りトウモロコシ」は、一見するとただの焼きトウモロコシに見えます。が、その正体はトウモロコシ100%のペースト。炭火で焼き上げたトウモロコシをペースト状にした後、トウモロコシ型に形成し直し、さらに表面に焼き色をつけているのだそうです。
旬の食材を使うため、メニューはその時々で変わります。夏に訪れたときのサラダは、「ホットな夏だし、夏野菜」。朝採れのナスや栗カボチャ、オクラ、パプリカ、ピーマンの花に、ナッツを混ぜた熱い和風出汁をかけていただく和洋折衷の一品。見た目も涼し気で、新鮮な野菜がいっそうおいしく感じられます。
サプライズはまだまだ続きます。ミニャルディーズ(食後の小菓子)は、バナナのパウンドケーキと柚子風味のチョコレートとともに盛られた黒い石。石??と驚かされますが、この中に小石そっくりに作られたマカデミアナッツのチョコレートを忍ばせているのです。小松の名産である石を盛り付けるアイデアは遊び心満点。ランチでさえも3時間に及びますが、飽きることがありません。
ユーモアある、そして唯一無二の料理を生み出すのは、米田裕二シェフと奥様の亜佐美シェフ。お二人とも、イタリアやスペインでシェフやパティシエールを務めた経歴の持ち主です。
亜佐美さんのご両親が営んでいた撚糸工場をリノベーションし、ここにレストランを開いたのは2015年のこと。「ヤーン(撚り糸)」という店名には、建物の由来に加え、糸を何本も合わせた撚糸のように、これまでの経験や地元食材などを組み合わせて「石川でしか表現できない料理を創造したい」という意味も込められています。
その思いのとおり、とても手間と時間がかかる料理は、たんに仕掛けに驚かされるだけではありません。素材そのものの旨味がぎゅっと凝縮していて、石川の食をたっぷりと楽しむことができます。
新しい小松の食文化は、驚きと感動の連続。この体験を通してきっと、石川の食の底力を感じられるはずです。
SHÓKUDŌ Yarn
住所:石川県小松市吉竹町1-37-1
電話:0761-58-1058
URL:http://shokudo-yarn.com/
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