世界無形文化遺産に認定されたバリ舞踊を、本場で堪能しよう。
きらびやかな衣冠を身にまとい、ガムランの調べにのせて、時に優雅に、時に素早く、後ろ姿さえも美しく魅せる伝統芸能「バリ舞踊」。初めて鑑賞する方も、その装束に加えて特徴的な目の動きや細やかな指先の揺れに惹きつけられるのではないでしょうか。
2015年12月 南アフリカで行われたユネスコ会議にて、「バリ島における伝統舞踊の三様式」として代表的な9つの舞踊が世界無形文化遺産リストに登録されました。
文化遺産認定の「バリ島の伝統舞踊三様式」とは?
ユネスコ世界無形文化遺産に認定された三様式と各様式から3種ずつ合計9種の舞踊について、バリ州教育文化庁勤務のイ・ニョマン・ブディアルタ氏にお話しを伺いました。ご自身も3歳から舞踊をはじめ、国内外で数々の賞を受賞。トリ・プサカ・サクティ芸術財団の運営責任者でもあります。
「三様式とは『ワリ』『ブバリ』『バリ・バリアン』です。宗教的意味合いの強さによって分類されます。また9種すべての舞踊はガムランなどの演奏を伴います。衣装に花や動物のモチーフを取り入れるなど自然からのインスピレーションを受け、さらにバリ島ならではの伝統や宗教価値を象徴しています。目や指先の動きさえも意味があるのです」
ワリ舞踊3種
9~14世紀発祥。三様式の中で最も儀礼性の強い奉納舞踊です。バリヒンドゥー寺院内のジェロアンと呼ばれる奥の院で演じられるため、一般の観光客が目にする機会はほとんどありません。ただしバリス舞踊は観光向けにアレンジされたものが定期公演で行われています。
ルジャン舞踊(Rejang Dance)
女性によって踊られる神聖な儀式舞踊です。祭礼でよく目にするルジャン・デワは場を浄化する意味から穢れのない初潮前の少女または結婚前の若い女性のみで編成されます。白と黄色のシンプルな衣装に、椰子の葉で編んだ花かごをかぶり、同じ動きを繰り返しながらゆっくりと進みます。
地域によって差があり、バトゥアン村のルジャンは既婚女性や外国人女性も正装クバヤを着用していれば踊りに参加できます(生理中は不可)。
サンヒャン・ドゥダリ舞踊(Rari Sanghyang Dedari Dance)
処女または成人に達していない女性2人が超自然な力をコントロールしてトランス状態で行う憑依舞踊です。目をつむって昏睡しているのに鏡に映したような振りを繰り返したり、熟練した高度な技を披露します。現在のケチャダンスの原形とも言われています。
儀式バリス舞踊(Baris Upacara Dance)
成人男性による群舞です。寺院の神々を護る勇士として、長い槍などの武器を手に、時おり掛け声を発しながら足を踏みしめて力強く踊ります。いくつも重なった帯や布は甲冑をイメージしているそうです。
近年は子供もしくは若い男性が1人で踊るバリス・トゥンガルが鑑賞舞踊として人気を博しています。
ブバリ舞踊3種
15~19世紀発祥。ワリより儀礼性が薄く、寺院内のジャボ・トゥンガーと呼ばれる中庭で奉納されます。物語要素のある劇形式で、踊りにバリ語や古代カウィ語のセリフや歌が加わります。観光客はトペン仮面舞踊のみ定期公演等で鑑賞できます。
トペン仮面舞踊(the Topeng Mask Dance)
仮面をかぶった舞踊劇で、バリ王朝史やジャワ物語をテーマに展開していきます。道化役のトペン・プナサール、将軍役のトペン・クラス、王様役のトペン・ダラム、女神役のトペン・デウィなど様々な人物が登場します。中でもラストに出てくるこのトペン・シダカルヤは破壊神シヴァの化身と言われ、その場を浄める役目があります。
ガンブー舞踊劇(Gambuh Dance Drama)
バリ島で最も古い奉納舞踊劇です。古代カウィ語が多用され、バリ人でもバリ語の解説がないと理解できないほど文化的にも技術的にもレベルが高く、古典バリ舞踊の原点と言われています。
またガムラン演奏に1m程度の巨大な竹笛スリン・ガンブーが用いられ、優しくゆるやかな音色を奏でます。
ワヤン・ウォン舞踊劇(Wayang Wong Dance Drama)
影絵劇ワヤン・クリッを人間が演じます。仮面をかぶる点ではトペン仮面舞踊と似ていますが、ラマヤナ物語をテーマに動物のお面が多く登場するなど差があります。動物らしい振りもみられ、役によっては飛んだり跳ねたりします。
バリ・バリアン舞踊3種
20~21世紀発祥。儀礼性はなく、鑑賞用の娯楽としてバレなどの建物内、寺院建立祭のオダランではジャボと呼ばれる外庭およびワンティランという集会所で演じられる舞台芸術です。定期公演のステージなどで最も目にする様式がこれにあたります。
レゴン・クラトン舞踊(The Legong Kraton)
バリ舞踊の代表格ともいえるレゴン舞踊。バリ・バリアンの中で最も歴史のある宮廷舞踊の総称です。レゴン・ラッサム、レゴン・クンティール、レゴン・ジョボクなど種類が多く、たいてい2人の女性(演目によって3人)が前半は同じ動作で舞い、後半は分かれてストーリーを紡いでいきます。
ジョゲッ・ブンブン舞踊(Joged Bumbung Dance)
女性が扇子を手に踊り、途中から男性客を誘います。誘われた男性は断ってはいけいないルールなので喜んで舞台にあがり(時にチップを払い)、踊りながらダンサーに触れようとします。しかし、ギリギリで華麗にかわす絶妙な舞いは周囲から笑いと賞賛を受けます。グランタンと呼ばれる竹ガムランが使われるのも特徴の1つです。
バロンケット舞踊(Barong Ket Kuntisraya)
神秘的な力を持つ聖獣バロンと、悪の象徴の魔女ランダの戦いを描いたストーリー仕立ての舞踊です。聖と邪、善と悪、などバリヒンドゥーの宗教観が表れています。2つが拮抗し合い、最後までどちらにも勝負はつきません。
これだけは観ておきたい!おすすめ定期公演
1.世界中のファンから根強い人気「ティルタ・サリ」
今世紀最高の演出家といわれるグデ・マンデラ翁によって1978年に創設された歌舞団です。プリアタン村に古くから伝わる伝統舞踊を中心に構成され、男女とも才能豊かなダンサーと深みのあるガムランで魅せてくれます。
ココが魅力
・文化遺産のレゴン、バリス、バロンなどが1度に観られる(演目は日によって変動)
・踊り手がハイレベルで安定したパフォーマンスを披露
・ガムラン奏者が多く、音に幅がある。踊り手とのタイミングも見事
ティルタ・サリ(Tirta Sari)/ ウブド
主な演目:レゴン・ラッサム、クビャール・トロンボン、バロンほか
開催日時:毎週金曜日 19:30~21:00
鑑賞料:100,000ルピア(約800円)
会場:バレルンマンデラ Br.Teruna Peliatan Ubud Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/kQESuALRuqn)
TEL:+62-361-972-124 / 970-503(英語・インドネシア語)
公式サイト(英語):http://www.balerung.com/
2.多彩なプログラムが魅力の「グヌン・サリ」
1926年グデ・マンデラ翁によって創設された伝統ある歌舞団。世界で初めてガムランの海外公演を行い、今でもそのお弟子さんたちで構成されています。プリアタンスタイルの柔らかく、キレのある踊りも目が離せません。
ココが魅力
・文化遺産のレゴン、バリス、バロン(ショートVer)が1度に見られる(演目は日によって変動)
・ガムラン演奏の見せ方が上手い。ガンサ(鉄琴)とレヨン(銅鑼)それぞれ注目されるパートがある
・屋外公演で余韻が広がる
グヌン・サリ(Gunung Sari)/ ウブド
主な演目:レゴン・ラッサム、バリス、オレッグ・タムリリンガンほか
開催日時:毎週土曜日 19:30~21:00
鑑賞料:100,000ルピア(約800円)
会場:アグンプリアタン王宮 (Google Map:https://goo.gl/maps/tn2YskuZ1xP2)
TEL:+62-361-976-576 / 978-654 / 974-256(英語・インドネシア語)
3.迫力ある舞踊と圧巻の音色「スマララティ」
インドネシア国立芸術大学(STSI)の教授と卒業生で1989年に結成されたグループです。天才的な才能を持つアノム氏は出てきた瞬間から場の空気が変わるほど圧倒的。ガムランの音色も澄んでいて心に響きます。
ココが魅力
・火曜日は伝統的な演目、土曜日は新創作を中心に公演
・アノム氏のバリス舞踊やトペン舞踊と、アユさんのタルナジャヤやオレッグに注目
・ガムランが澄んだ音色で切れ味抜群
スマララティ「スピリット・オブ・バリ」 (Semara Ratih)/ ウブド
主な演目:バリス、レゴン・ジョボグ、タルナジャヤほか
開催日時:毎週火曜日 19:30~21:00
鑑賞料:100,000ルピア(約800円)
会場:クトゥ村寺院 No.72 Jl.Jero Gadung Ubud Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/2tB4Tu4Bn352)
TEL:+62-361-973-277 / +62-812-380-7227(英語・インドネシア語)
公式サイト(英語):http://www.semararatih.org/
4.人間国宝級の仮面舞踊を間近で鑑賞「トペン・ジマット」
バトゥアン村出身のジマット氏が率いる舞踊グループです。ジマット氏は数々のコンクールで優勝経験があり、海外公演も数えきれないほど。島内全域での寺院祭礼参加やステージ公演も多く、合間を縫ってアルマ美術館で公演されています。
ココが魅力
・文化遺産のトペン仮面舞踊を堪能。ベテランは仮面の表情が動いて見える
・ユーモラスなストーリーで笑いあり
・観客がステージに呼ばれることも!遠慮せずに上がろう
トペン・ジマット(Topeng Djimat)/ ウブド
主な演目:トペン(トゥア、クラス、ダラム、シダカルヤほか)
開催日時:毎週水曜日(新月・満月を除く) 19:00~20:30
鑑賞料:80,000ルピア(約640円)
会場:アルマミュージアム Jl.Pengosekan Ubud Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/tonUo32NwZK2)
TEL:+62-361-976-659(英語・インドネシア語)
公式サイト(英語):http://www.armabali.com/arma-culture/performances/
5.週末ごとに無料で楽しめる「アート・センター」
ココが魅力
・地域や年齢に関係なく、様々な舞踊を幅広く上演
・ビデオ上映会では昔の貴重なフィルムを鑑賞(1930年代など)
・毎年6月中旬から約1ヶ月間「バリ・アート・フェスティバル(PKB)」開催。島内の先鋭が集結
アート・センター(Taman Budaya・Arts Centre)/ デンパサール
主な演目:舞踊公演またはビデオ上映
開催日時:毎週金・土・日曜日 20:00~(演目によって開始時間に変動あり)
鑑賞料:無料
会場:アート・センター Jl.Nusa Indah No.1 Panjer Denpasar Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/J9NaGwFjU6B2)
TEL:+62-361-227-176(英語・インドネシア語)
6.観光用バロンダンスを毎日上演「バトゥブラン」
ココが魅力
・歴史は浅いが連日開催で観客のツボを押さえたストーリー展開
・全5会場あり、大きな会場では300名程度収容できる
・朝公演につき鑑賞後のスケジュールが組みやすい
ジャンべ・ブダヤ(Jambe Budaya)/ バトゥブラン
主な演目:バロン
開催日時:毎日 9:30~10:30
鑑賞料:100,000ルピア(約800円)
会場:ジャンべ・ブダヤ Jl.Pasekan Batubulan Gianyar Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/fxvnzydtce52)
TEL:+62-818-0559-0490(英語・インドネシア語)
人気グループの公演は混み合います。良い席で鑑賞したい場合は開演の30分以上前に到着しましょう。席を確保するために貴重品を置いておくと無くなる可能性があります。
公演によって「ウブド観光案内所(Ubud Tourist Information)」から無料バスが出ますし、市内なら歩くこともできますが、夜間は特に往復カーチャーターをおすすめします。
屋外または夜公演は蚊が多くなります。虫よけスプレーをお持ちください(会場によっては蚊取り線香あり)。
憧れのバリ舞踊にチャレンジ!おすすめレッスン3選
「バリ舞踊を習ってみたい!」という初心者から、「踊りのレパートリーを増やしたい」「表現力を付けたい」という中級者や上級者まで、バリ島ではレベルやスタイルに合わせて学ぶことができます。人気の先生はレッスンや公演でスケジュールが埋まっているので事前に予約してから伺ってくださいね。
デワ・ニョマン(Dewa Nyoman Irawan / 男性)
男形も女形もこなす、国内外経験豊富な人気スター。柔らかい口調としっかりした教え方が魅力です。
舞踊スタイル:プリアタン、デンパサール
レッスン代(1時間): 200,000ルピア(短期)、100,000ルピア(長期)
住所:Br. Pengosekan Kaja Ubud Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/ujS2rJo78qm付近)
TEL:+62-817-553-828(日本語可)
E-mail:dewairawan16@gmail.com(日本語可)
公式サイト(英語・日本語):http://www.dewa-nyoman-irawan.com/
オリ(Made Wartini / 女性)
ティルタ・サリで活躍したダンサー。明るい性格と丁寧な指導で、多くの生徒から師事されています。
舞踊スタイル:メインはプリアタン(デンパサールも応相談)
レッスン代(1時間):100,000ルピア
住所:Jl.Cok Gde Rai Gang Belong No.20 Br.Teruna Peliatan Ubud Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/xFXvZTNEAok)
TEL:+62-812-3865-4584 / 0859-3508-2380(英語・インドネシア語)
E-mail:oli_2kum@yahoo.com(語・インドネシア語)/ asyik_bali@yahoo.co.jp(日本語)
公式サイト(日本語):http://olibali.web.fc2.com/
ジマット(I Made Djimat / 男性)
バリ島を代表する舞踊家。優しく穏やかな人柄で、国内外の先生レベルまでもが足繁く通っています。また、レッスン中にタイミングがあえば寺院公演の鑑賞に同行させてくれることもあります。
舞踊スタイル:デンパサール、バトゥアン(トペン、ガンブー、ワヤン・ウォン)
レッスン代(1時間): 150,000ルピア、75,000ルピア(学生)
住所:Br. Pekandelan Batuan Sukawati Bali(Google Map:https://goo.gl/maps/YF1sAjSVHwr付近)
TEL:+62-361-296-137 / +62-81-2394-4501(英語・インドネシア語)
E-mail:pusakasakti@hotmail.com(英語・インドネシア語)
公式サイト(英語):http://pusakasaktiarts.com/
ユネスコ世界無形文化遺産に登録された伝統芸能を、ぜひ本場バリ島でお楽しみください。
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※価格は2016年10月現在のものです。
※1円=約125ルピア(2016年10月現在)
取材協力:トリ・プサカ・サクティ芸術財団
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