ベルリンで、映画「コーヒーをめぐる冒険」を巡ってみよう
2014年、日本でも公開されたベルリンが舞台の映画「コーヒーをめぐる冒険」。
人生模索中の青年ニコが、朝のコーヒーを飲みそこねたことから始まる、なんともついていない1日と、彼を取り巻くちょっと癖のある人達を描いたモノクロ映画です。この映画のもう1つの主役が、撮影の舞台となったベルリン。観光名所ではないけれど、素敵な場所がたくさん登場するこの映画で、ベルリンのことが気になった人も多いのでは? 映画を見ただけでは分からない、リアルなベルリン事情をご紹介します。
若者に大人気のPrenzlauer Berg 地区
Eberswalder Str.の駅前は、路面電車の駅もあり、寒くて天気の悪い日でも、常に人通りの多い賑やかな場所。頭上を行き交う電車の黄色が、曇り空に鮮やかに映えている。
映画の冒頭と要所要所で登場する、建ち並ぶ瀟洒(しょうしゃ)な建物の真ん中に渡された高架上を走る電車。引っ越して来たばかりのニコが住まう家から見えるこの駅は、地下鉄U2線のEberswalder Str. Bhf. (エバースヴァルダー通り駅)。旧西側と旧東側を大きく横切る路線です。ニコの住む旧東側のPrenzlauer Berg (プレンツラウアー・ベルク)地区は、ベルリンの壁が崩壊した直後、あまり雰囲気が良くなかったといわれる地域でした。しかし、時を経て、今では若者や家族連れに大人気のエリアとなりました。おしゃれなカフェやレストラン、ブティックなどが立ち並んでいますが、観光客向けのお店というより、ベルリンで暮らす人々が日常的に親しんでいる、暖かみのある場所が多いのが特徴です。
憧れのベルリンアパート事情
ニコが路面電車を追いかけるのが、Eberswalder Str.の駅前から斜めに大きく伸びるKastanienallee (カスタニエンアレー)。両サイドに素敵なお店が建ち並び、ぶらぶら歩くだけでも楽しい通り。
ニコが住んでいる駅前の部屋は、ベルリンの物件探しサイトで「Berliner Wohnung (ベルリンのアパート)」と称されることもあるほど、ベルリンに住む多くの人が憧れる特徴を見事に押さえた物件です。上階で眺めがよく、ベランダ付き、何より「Altbau (アルトバウ)」と呼ばれる、第二次世界大戦前に建てられた家屋なのです。そのため、室内の天井が高いだけでなく、ファサードなど、あちこちに素敵な彫刻が施されているのが特徴です。ここ数年家賃の高騰が激しいベルリンで、希望通りの物件探しはドイツ人でさえなかなか難しく、ニコが住んでいるような部屋に住もうと思ったら、かなりの競争率と長期戦を覚悟しなくてはなりません。
夜遊びするなら外せないSchlesisches Tor駅
5月の新緑の中を走り抜けるU1線。週末は電車やバスが一晩中運行しているベルリンなので、このエリアの深夜の電車はクラブをはしごする人達でいっぱいになる。
西へ東へ忙しなく、ニコが移動するなかで何度か登場する、地下鉄U1線のSchlesisches Tor Bhf. (シュレージッシェス・トール駅)近辺。U2線のEberswalder Str. Bhf. (エバースヴァルダー通り駅)と同じく、本来、地下を走るはずの地下鉄が、一部区間で地上を走っています。この辺りは、クラブが多いことでも有名なエリアなので、夜が更けるほど、通りを行き交う人の数が増えていきます。
Schlesisches Torの駅前は、交通量も多く、ミュージシャンが演奏していたりするような常に賑やかな場所。この駅周辺は、Burgermeisterだけでなく、カフェやレストラン、バーも多くあるが、Eberswalder Str.近辺に比べて、もっとざっくばらんとした下町っぽい雰囲気である。
免停中の運転免許証を返して貰い損ねたニコが、釈然としないまま、電車を乗り継いで移動するシーンで、一瞬出てくるのが、このSchlesisches Tor Bhf. (シュレージッシェス・トール駅)の高架下にある、100年以上昔の公衆トイレを改装した人気のバーガーショップ「Burgermeister (ブルガーマイスター)」。設置された当時のしゃれた外観をそのまま利用しているので、よく見ると「Männer (男性用)」と書かれた札がお店の隅に残されているのを見つけることができます。
改札の無いベルリンの電車
同級生ユリカのアートパフォーマンスを観に行ったのは、かつてサブカルチャーの聖地と呼ばれていたKunsthaus Tacheles (アートハウス タヘレス)。様々な大人の事情で2012年に閉鎖。今は、廃墟のような外観しか見ることができない。
ユリカと別れた後、ニコがふらりと立ち寄ったのが、Tachelesから歩いて5分程のバーKing Size。老人フリードリヒを助け起こそうとしたのが、ちょうどこの路上。通りの名前もFriedrich Str. (フリードリヒ通り)なのは、わざとなのか?目の前にU6線の駅と路面電車の駅があり、交通の便も良いため、観光客も多く行き交うエリア。
中国風の装飾が特徴的なレストラン「White Trash Fastfood」で、同級生ユリカと偶然出会い、撮影スタジオにお邪魔した後、ベルリン郊外Hohen Neuendorfのゴルフ場「Golfclub Stolper Heide」まで、電車とバスを乗り継いで行ったニコは、またも、やり切れない気持ちを抱えてベルリンに戻ることになります。駅で電車のチケットを買えなかったニコは、U2線の電車内でコントローラーと呼ばれる無賃乗車検察官らに捕まり、旧西側のDeutsche Oper Bhf. (ドイチェ・オーパー駅)のホームで押し問答をする羽目に。
ベルリンの駅には日本にあるような改札がありません。電車に乗りたい人は、券売機で切符を買い、日付と時間(刻印から2時間有効)が刻印されるスタンプを押さなければなりません。また、彼らは常にいるわけではなく、曜日時間帯関係なく、電車のドアが閉まり、乗客が逃げられない走行中の電車内で、打ち抜きチェックを始めます。通常2人か3人で、1つの車両の両端からチェックを始めます。チケット無し、スタンプ無し、時間切れチケットの乗客は、次に停車する駅で強制的に降ろされ、身分証明書の提示とともに、罰金40ユーロを支払う手続きをすることになります。一般乗客のふりをして電車に乗り込み、電車が動き出してからチェックするというやり方は、けして評判がいいとは言えないのが現状です。
ベルリン街歩きは、電車のチケットを忘れずに
電車やバスなどの公共交通機関が発達しているベルリンでは、乗車券さえ買っておけば、行きたい場所にはどこでも行けると言っても過言ではありません。観光地ではない、もっとベルリンの日常姿を楽しんでみたい貴方は、ガイドブックではなく、乗車券片手に街に出てみると、ちょっと変わった発見や出会いがあるかもしれません。
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