ナショナルモールのワシントン記念塔とリンカーン記念館の間には、巨大な黒色花こう岩の壁が立っています。この壁がベトナム戦争戦没者慰霊碑。前に立ち、ベトナム戦争に命をささげた何万人ものアメリカ兵にそっと思いを巡らせましょう。
ベトナム戦争戦没者をたたえて建てられた、「ザ ウォール (壁)」と呼ばれるこの慰霊碑には、58,000 人以上の兵士の名前が刻まれています。名前と一緒に刻まれているマークには意味があり、ひし形は死亡が確認された兵士を、十字は行方不明兵を意味します。驚くほどたくさんの戦没者の名が刻まれているため、ここを訪れた人は、ベトナム戦争がもたらした国としての、そして、個人としての大きな喪失感に今も深い悲しみを禁じ得ません。
この記念碑は一枚の壁でできているのではなく、長さ 76m の 2 枚の壁が V 字形に並んでいます。一方の端はリンカーン記念館のそばを、もう一方はワシントン記念塔の方向を向いています。慰霊碑としては風変わりな構造をしていますが、実は、この戦争の是非をめぐって二分した世論を、2 つの壁に分けることで表現しているのです。ずらりと並ぶ名前を見ていると、壁の反射がとても強いことに気が付きます。これは、過去と未来を一緒に見つめるようにとの思いから、意図的に加工されたもの。
1 年中いつ訪れても、記念碑の足元には悲しみに暮れる遺族の供えた花輪やメッセージ カード、プレゼントなどが置かれています。たくさんの人が絶えず訪れ、ベトナム戦争で失った愛する人に敬意を表したり、この戦争が生み出した悲劇に胸を痛めたりする、静かで厳粛な空気に包まれた場所です。
慰霊碑の近くには、3 人の兵士の像とベトナム女性記念碑も飾られています。慰霊碑よりも伝統的な趣のあるこの 2 つの像は、慰霊碑があまりにも抽象的であるとして反対した人々に歩み寄る目的もあって作られました。
慰霊碑は毎日24 時間いつでも訪れることができます。午前 8 時から午前 0 時までスタッフが常駐しており、毎正時には慰霊碑を案内してくれるツアーが行われます。